ポーカーで人間に勝利したAI(人工知能)を開発した元研究者らが設立したスタートアップ企業が、同じ技術を株式取引に応用し、高い収益を上げていることが明らかになりました。この企業は新たな資金調達を実施し、企業価値が5億ドル(約775億円)に達したということです。
チェコの首都プラハに拠点を置くAI開発企業「EquiLibre Technologies」は、アメリカのIT大手グーグル傘下のAI企業「ディープマインド」の元研究者3人によって設立されました。関係者によりますと、同社はシリーズAと呼ばれる初期段階の資金調達を実施し、企業価値が5億ドル(約775億円)に達したということです。
今回の資金調達を主導した投資会社「Creandum」の担当者は、具体的な調達額は明らかにしなかったものの、「1社に対する1回の投資としては過去最大規模だ」としています。
同社が開発したAIは「強化学習」と呼ばれる技術を用いています。これは、AIが自ら学習を繰り返し、報酬を最大化するよう行動を最適化する仕組みです。同社のマーティン・シュミットCEO(最高経営責任者)は、「金融取引は『AIがいくら利益を出したか』という評価基準が非常に明確であり、強化学習に適している」と説明しています。
同社は、アメリカの金融企業と提携し、S&P500やナスダックなどの株式市場で、毎日数十億ドル(数千億円)規模の取引をAIで行っているということです。2025年に暗号資産市場で運用を開始して以降、月間の運用成績でマイナスを記録した月は一度もないとしています。
一方で、シュミットCEOは「私たちは金融企業ではなく、あくまでAIの研究機関だ」と強調しています。創業者3人に金融業界での経験はなく、これまでにない新しい技術を開発すること自体が目的だということです。
創業者らはかつて、カナダの研究拠点でポーカーのプロ選手に勝利するAIを開発した実績を持ちます。その後、母国であるチェコに戻り、起業しました。シュミットCEOは、アメリカのシリコンバレーなどと比べ、チェコは優秀な人材が定着しやすい環境にあるとしています。
同社は過去にも資金調達を行っており、以前のラウンドでは1000万ドル(約15億5000万円)を調達し、当時の企業価値は1億4000万ドル(約217億円)だったということです。今後は、中東欧で最大規模となる計算処理システムを構築し、AIの性能をさらに高める方針です。
金融取引の分野では、AIを活用した自動化が急速に進んでおり、豊富な資金力を持つ他社との競争も激化しています。シュミットCEOは、「4年前から強化学習に取り組んできた先行優位性がある」と自信を示すとともに、「金融市場は1社がすべてを独占する市場ではない」と述べ、独自の技術力で事業を拡大していく考えを示しました。
