アメリカの連邦議会下院は、国内で販売されるすべての新車に対し、追加料金なしでAMラジオの搭載を義務付ける法案を可決したと発表しました。この法案は今後、上院での審議へと移るということです。
「すべての自動車のためのAMラジオ法案」と呼ばれるこの法案は、与野党の枠を超えた圧倒的な賛成多数で可決されました。法案が成立した場合、アメリカ運輸省道路交通安全局(NHTSA)を通じて、自動車メーカーに対し、乗用車の標準装備としてAMラジオを搭載することが義務付けられる方針です。
AMラジオの推進派はこれまで、電波が遠くまで届く特性から、災害などの緊急時に重要な情報源になるとして搭載の義務化を求めてきました。民主党や共和党の議員をはじめ、放送業界や救急対応機関、さらに連邦緊急事態管理庁(FEMA)の元幹部などからの幅広い支持が集まり、法案成立への機運が高まっているということです。
上院でも下院と同様に法案が可決される公算が大きいとみられています。法案を共同提出したエド・マーキー上院議員(民主党)とテッド・クルーズ上院議員(共和党)は、すでに議事妨害(フィリバスター)を回避するために必要な60人の共同提案者を確保しているとしています。
両議員は共同声明を発表し、「今回の投票結果は、自動車メーカーに対し、AMラジオが新車において保護されるべき『命綱』であるという明確なメッセージを送るものだ」と強調しました。さらに、「緊急時の対応からスポーツ、ニュースに至るまで、AMラジオは数千万人のアメリカ人にとって不可欠な通信ツールであり、上院でも速やかに可決されるべきだ」としています。
一方で、自動車メーカーの事業戦略においては、AMラジオを廃止する動きが広がっていました。BMWやリビアン、テスラ、ボルボなどの各社は、従来のラジオ放送からストリーミングサービスを提供するソフトウェア定義型自動車(SDV)への移行を進めています。なお、フォードも一部の車両でAMラジオを廃止していましたが、その後方針を撤回し、搭載を継続するとしています。
特に電気自動車(EV)メーカーがAMラジオの廃止を主導してきた背景には、電気モーターから発生する電磁波の干渉問題があります。メーカー側は、この電磁波の干渉によってAMラジオの電波や音質が劣化すると主張しています。
現在、テスラの「モデル3」および「モデルY」の基本モデルには、AMラジオの受信機が搭載されていません。また、リビアンの新型SUV「R2」にもAMおよびFMの受信機は搭載されていませんが、デジタルラジオのプラットフォームを通じて無料でラジオを聴取できる仕組みを提供しているということです。なお、今回の法案について、テスラやリビアンからの公式なコメントは得られていないとしています。
