アメリカの連邦取引委員会(FTC)は、患者の医療データなどを本人の同意なしにIT大手などに共有していたとして、オンライン医療サービス大手の「ヒムズ・アンド・ハーズ(Hims & Hers)」を提訴したと発表しました。
同社は、性に関する健康問題やメンタルヘルス、減量などの処方薬を提供する上場企業であり、極めて機密性の高い患者のデータを大量に取り扱っています。FTCは近年、顧客に無断で外部企業と機密情報を共有する医療関連企業への取り締まりを強化しており、今回の提訴もその一環だということです。
カリフォルニア州の連邦裁判所に提出された訴状によりますと、同社は自社のウェブサイトに、「メタ(Meta)」や「スナップ(Snap)」、「マイクロソフト(Microsoft)」、「X(旧ツイッター)」などのIT企業が提供する追跡用のプログラム(ピクセル)を組み込んでいました。
FTCは、これらのプログラムを通じて、同社が自社のプライバシーポリシーに反して利用者の健康情報を取得し、広告主と共有していたと指摘しています。さらに、メタのツールを利用して、サイト上での利用者のクリック履歴などの行動も追跡していたとしています。
またFTCは、同社が不当な請求を行っていたほか、サービスの解約を意図的に困難にする仕組みを設けており、連邦消費者保護法に違反しているとも非難しています。
これに対し、ヒムズ・アンド・ハーズ側は自社のウェブサイト上で声明を発表しました。FTCの主張を明確には否定しなかったものの、「利用者は自身のデータがどのように使用されるかを選択できることが、プライバシーポリシーに明記されている」と主張しています。同社は自社の正当性に自信を示しており、法廷で争う方針です。
FTCはこれまでにも、遠隔医療スタートアップの「セレブラル(Cerebral)」や、処方薬割引サービスの「グッドアールエックス(GoodRx)」などに対しても、同様のデータ共有問題で法的措置をとっています。
ウェブサイトに組み込まれる追跡用プログラムをめぐっては、設定の不備などにより、利用者の意図しない形で機密データが収集・共有されるリスクが指摘されています。2024年には、アメリカ郵便公社(USPS)が同様のプログラムを使用して利用者の自宅住所をメタなどに共有していたことが発覚し、その後プログラムを削除する事態も起きています。
