自動運転技術の専門人材を巡り、ロボティクスや防衛技術を扱う「物理AI(フィジカルAI)」関連企業による引き抜きが激化していることが明らかになりました。基本給が最高で50万ドル(約7750万円)に達するケースもあり、自動車メーカーやスタートアップ企業への影響が懸念されています。
関係者によりますと、自動運転トラックやロボタクシーの開発に携わる技術者が、ロボティクスや防衛技術を扱う企業に引き抜かれる事例が相次いでいるということです。こうした企業は、AI(人工知能)をハードウェアに統合する「物理AI」の専門知識を持つ人材を求めています。
自動運転企業が求める理想的な人材は、従来のロボット工学とAIの知識を併せ持つ技術者だとされています。人型ロボットや産業用ロボット、自動運転フォークリフトのほか、建設、鉱業、農業用機械にAIを組み込む技術が求められており、企業間で激しい人材獲得競争が起きています。
特に防衛技術関連のスタートアップ企業は、アメリカ国防総省の豊富な資金を背景に、高い報酬を提示しているとみられています。株式報酬などを除く基本給だけでも、30万ドル(約4650万円)から50万ドル(約7750万円)に達しているということです。
この人材流出により、自動車メーカーは自動運転技術に携わるエンジニアの引き留めが困難になる方針です。また、スタートアップ企業は人材確保のためにさらなる資金調達を行うか、資金の使途を見直す必要に迫られるとみられています。一方で、豊富な資金力を持つグーグル傘下の自動運転企業「Waymo(ウェイモ)」などには、大きな影響は及ばないとの見方も示されています。
こうした中、アメリカのベンチャーキャピタル「Eclipse(エクリプス)」は、物理AI分野を対象とした新たな投資ファンドを設立したと発表しました。総額13億ドル(約2015億円)の資金が用意され、このうち5億9100万ドル(約916億円)が初期段階のスタートアップ支援に充てられるということです。
モビリティ業界では、ほかにも以下の動きが報告されています。
無人航空機を開発する防衛スタートアップ「Hermeus(エルメウス)」は、企業価値を10億ドル(約1550億円)とし、新たに3億5000万ドル(約543億円)の資金を調達したと発表しました。また、持続可能な航空燃料(SAF)を開発する「Sora Fuel(ソラ・フューエル)」も、1460万ドル(約23億円)を調達したということです。
アメリカのメディアは、テスラが2万5000ドル(約388万円)を下回る小型で安価な新型電動SUVを開発していると報じました。一方、フォルクスワーゲンはアメリカ・テネシー州の工場での電気自動車「ID.4」の生産を終了し、ガソリン車の生産に切り替える方針です。また、同社の子会社である「MOIA America」は、ウーバー(Uber)と共同で、ロサンゼルスにて自動運転マイクロバスの試験走行を開始したと発表しました。
Waymoは、自動運転タクシーが収集した道路のくぼみ(ポットホール)に関するデータを、ナビゲーションアプリ「Waze(ウェイズ)」のプラットフォームを通じて自治体に提供する試験プログラムを開始したと発表しました。また、同社はテネシー州ナッシュビルでもロボタクシーの一般提供を開始し、サービス展開エリアを拡大しています。一方で、自動運転企業「Avride」の車両がテキサス州で動物をひく事故を起こし、地域住民から批判を浴びる事態も発生しているということです。
アメリカの農機大手ジョン・ディア(John Deere)は、製品を所有者が自ら修理する権利を巡る訴訟において、9900万ドル(約153億円)を支払うことで和解に合意したということです。
