アメリカの首都ワシントンで審議されている自動運転タクシー(ロボタクシー)の運行を許可する法案を巡り、配車サービス大手「ウーバー(Uber)」と自動運転開発大手「ウェイモ(Waymo)」の対立が深まっていることが明らかになりました。ウーバーは、人間のドライバーと自動運転車が共存する「ハイブリッドモデル」の義務化を求めるロビー活動を展開しており、ビジネスパートナーであるウェイモと真っ向から対立する構図となっているということです。
ウーバーはこの法案に反対しており、法案が成立すれば人間のドライバーの雇用が奪われ、ウェイモに事実上の独占状態をもたらすと主張しています。関係者によりますと、ウーバーは代わりに、自動運転タクシーが人間のドライバーと同じ配車ネットワーク上で運行することを義務付ける制度の導入を求めているということです。
ウーバーでアメリカ国内の政策を担当するハビ・コレオソ氏は、今年5月の公聴会で「特定の企業のみに有利な規制が都市に混乱をもたらす事例はすでに確認されている」と指摘しました。同氏は、自動運転タクシーが空車で走行することで渋滞を引き起こすことや、高齢者や障害者に対して人間のドライバーのような身体的サポートを提供できないことなどを懸念材料として挙げています。また、1台の自動運転車がおよそ4人のドライバーの仕事を奪うというデータも示しています。
コレオソ氏は、ウーバーが提唱する「ハイブリッドモデル」について、「消費者がアプリ上で自動運転車と人間のドライバーの両方を選択できるようにする仕組みだ」と説明しています。さらに、「消費者が人間の運転する車を選べることを、業界の規制枠組みとして義務付けるべきだ」と述べています。
一方、IT大手グーグルの親会社アルファベット傘下のウェイモは、この法案を支持しています。法案によって、ウーバーなどの企業を制限することなく、自動運転車の安全な導入や公共交通機関の支援、公平なアクセスの確保が可能になるとしています。
今回の法案は、2012年に制定された自動運転車法を改正し、無人での走行テストや商業運行を許可するものです。新たな法案では、交通当局が一定の基準を満たした開発企業に対して許可を出す権限を持ちます。基準には、最低500万ドル(約7億7500万円)の賠償責任保険への加入や、事故発生時のデータ報告義務などが含まれています。
また、自動運転タクシーの事業者に対し、走行距離1マイルあたり0.15ドル(約23円)の税金を課すことも提案されています。この税収の半分は公共交通機関に充てられ、残りは自動運転車の普及によって職を失うリスクがあるタクシードライバーの教育や就労支援に使用される方針です。
ウーバーはアメリカ最大の配車・配達ネットワークを持ち、ウェイモは11の都市で毎週50万回以上の乗車を提供する最大の自動運転タクシー事業者です。ウーバーの「ハイブリッドモデル」が採用された場合、ウェイモなどの開発企業は、自社の自動運転車をウーバーのような配車アプリに提供するか、自社で人間のドライバーを雇用するかの二者択一を迫られることになります。これには、長年の開発期間と数億ドル(数百億円)規模の投資が必要となります。一方、ウェイモが支持する法案が成立すれば、ウーバーは市場から締め出されると主張しています。
ウーバーは現在、世界で30以上の自動運転技術企業と提携や投資を行っています。同時に、実際の運転データを収集して開発企業と共有する新たな事業部門を設立し、多数の技術者を採用しています。こうしたデータ収集や技術の自立化に向けた独自の戦略を進める一方で、自動運転車と人間のドライバーが同じプラットフォーム上で共存することを義務付ける保護的な政策を推進しています。
業界内では、法案の税金や車両数の上限に関する批判がある一方で、ウーバーのハイブリッド案に反対する声も上がっています。モビリティ分野のシンクタンクの代表は、ウーバーの動きを「規制の私物化」と批判し、「特定のビジネスモデルを強制することは、消費者の選択肢を狭め、安全性の向上にもつながらない」と指摘しています。
ウーバーがドライバーを擁護し、妥協を模索する姿勢を見せていることは、過去の同社の戦略を知る者にとっては驚きをもって受け止められています。かつてのウーバーは、既存の規制を回避し、労働組合が支持する法案に強く反対してきました。しかし、相次ぐ規制当局との対立や企業イメージの悪化を経て、現在では都市や労働者と協力する方針に転換したということです。
ウェイモとウーバーは過去にも企業秘密の窃盗を巡って対立した経緯がありますが、近年は再び提携関係を結び、一部の地域でウーバーのアプリを通じてウェイモの自動運転タクシーを利用できるサービスを展開していました。
しかし、ここ数か月で両社の関係は再び悪化しています。ウーバーの幹部がSNSでウェイモの車両の安全性を批判したほか、CEOも決算発表の場で規制当局の厳しい姿勢を支持する発言を行いました。両社の対立は他の地域にも波及する可能性があり、今後の動向が注目されています。ウーバーの政策担当者は、「交通システムの未来はハイブリッドになると考えている。現実に基づいた政策が求められている」と強調しています。
