アメリカ・エネルギー省傘下の研究所が、中国製のLiDAR(ライダー)センサーがアメリカ国内の自動車に広く搭載された場合、安全保障上の脅威となる可能性があるとして、調査を進めていることがわかりました。
関係者によりますと、調査を行っているのはアメリカ・エネルギー省のアイダホ国立研究所です。この調査は、電気自動車(EV)や自動運転車業界の企業、または企業グループからの資金提供を受けて実施されているということです。
現在、どの企業が調査を支援しているかは明らかになっていません。中国製LiDARの採用を検討しているとされるリビアンやゼネラル・モーターズ(GM)、フォードなどの各社は、調査について「承知していない」としています。また、アイダホ国立研究所や、中国の主要LiDARメーカーである禾賽科技(Hesai)および速騰聚創(RoboSense)はコメントを控えています。
LiDARは、レーザー光を使って周囲の物体との距離を正確に測定するセンサー技術です。自動運転車の周辺環境を高解像度で把握できるため、自動運転技術の開発において重要な役割を担っています。
アメリカ議会では、中国製LiDARセンサーの国内での使用を禁止する複数の法案が検討されており、規制強化を求める声が高まっています。法案を主導するタミー・ボールドウィン上院議員は、「中国のLiDAR技術が軍事や産業スパイに利用される懸念がある」と指摘し、アメリカのインフラと安全保障を保護する姿勢を強調しています。また、ジョン・ムーレナー下院議員も、システムに組み込まれた「バックドア」を通じて、機密情報が中国側に送信されるリスクに懸念を示しています。
イスラエルのLiDARメーカー、イノヴィズのオメル・ケイラフCEOは、中国製LiDARの使用にはサプライチェーンの依存リスクとサイバーセキュリティのリスクがあると指摘しています。具体的には、センサーが一斉に無効化されて走行中の車両が混乱する危険性や、収集された詳細なデータが圧縮されて外部に送信される可能性が挙げられるとしています。
こうした懸念が強まっている背景には、LiDARの価格が過去10年間で劇的に低下したことがあります。10年前には最大7万5000ドル(約1160万円)だった製品が、中国企業の量産化によって現在では数百ドル程度にまで値下がりしています。アメリカのLiDARメーカーは価格競争で苦戦を強いられており、業界の再編や経営破綻に追い込まれる企業も出ているということです。
このため、アメリカの自動車メーカーや自動運転企業の多くが、コスト削減のために中国製センサーの採用を検討しています。一方で、リビアンのRJ・スカリンジCEOは今年3月、中国の技術を活用しつつも、アメリカ国内や中国外での生産能力を確保するため、他社と連携する可能性について協議していると述べており、サプライチェーンの自立化を模索する動きもみられます。
現在、アメリカ国内での中国製LiDARの使用は法的に認められていますが、今後の規制の行方は不透明です。アメリカ国防総省は、中国軍を支援しているとして、HesaiとRoboSenseを取引制限の対象となるリストに指定しています。また、商務省は2025年に中国製通信ハードウェアの搭載を禁止する規則を施行しましたが、LiDARなどの自動運転用センサーは現時点で対象外となっています。
大規模なシステム障害の懸念は今のところ推測の域を出ていませんが、2024年初めには、Hesai製のLiDARセンサーが「うるう年」の処理に対応できず、搭載された自動運転車が丸1日機能停止するトラブルも発生しており、システムの信頼性に対する懸念が浮き彫りになっています。
